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農業でも地域でも、頑張る人を応援したい。 それが自分の活力になる。 移ヶ茸代表・安田悟さん

コラム

2021.02.08


新しい挑戦として選んだ「きくらげ農家」。
その先に見据える農業、そして地域の未来。

きくらげ農家「移ヶ茸」代表として、昨年2020年から栽培を始めた安田さん。前職の部品製造会社で19年間も責任者として活躍する中で、なぜ農業という新たなフィールドでの挑戦を決断したのか、またその舞台となる地域への想いを伺ってきました。


-前職では工場の立ち上げから携わり、長年にわたって会社規模を成長させてきたそうですね。そのまま会社に在籍していれば功労者として居られるのに、なぜ異業種の農業に挑戦しようと思われたんですか?

安田さん:端的に言ってしまえば、追いかける目標がなくなってしまったんです。製造機械は敷地一杯に増設し、人員も時間も出来るだけ割り当てて稼働してもらう中で、新たな仕事を開拓出来なくなり、自分が会社にいる意味があるのかなと感じていました。いつでも何かに挑戦していないなとダメな性格なんです。泳いでいないと死んでしまうマグロみたいなものですね(笑)そんな事を考えている時期に、両親が使わなくなっていた農機具を売却する話が出たんです。せっかく揃えた高額な農機具を使って、自分ひとりで何か打ち込める事ができないか、漠然と考え始めました。

「きくらげは限られた数の菌床で、どれだけ収量を増やすかが技術を問われる部分です」

-農業への挑戦の一歩として数多くある農産品の中から、なぜきくらげを選ばれたのでしょうか?

安田さん:ここの地区が畦石と呼ばれるのは理由があって、土壌が岩盤で石だらけなんです。田畑を切り拓いた先祖は本当に大変だったと思います。トラクターで耕すとロータリーが壊れてしまう程で、葉物野菜を作っても労力に見合うだけの収量も見込めませんし、区画されていない段々畑なので移動も非効率です。そんな環境で一人で作業できる農産品を検討した結果、均一な気温と湿度の環境で雨が降っても作業ができる、きのこ類の栽培にたどり着いたんです。害獣被害が少ないことも選んだポイントです。
 さらに調べてみると、きのこ類の中でもきくらげは日本で消費される97%の物が、海外から輸入された乾燥きくらげだったんです。国産で安心安全なきくらげが生産できれば、コストに見合う需要はあると考えたんです。
 私は製造業で現場管理を長くしていたので、費用対効果の観点で農産品も見てしまうんです。コストを軽視して規格に沿った農作物を作り続ける農業では、金銭的にも人的にも今後は継続は難しくなってくるはずです。これからは売りになるポイントがある農産物を、消費者に近い場所で生産者が送り出す時代になっていくのではと思っています。農業を始めたばかりなので、あまり大きな事はいえませんがね(笑)
 
-国内、特に東北では生産が少ないきくらげ栽培のノウハウは、どのように習得したのでしょうか?

安田さん:西会津町で東日本でも有数の菌床数を栽培している生産者さんがいる事を知り、妻と子ども家族全員で研修をお願いしに行きました。もう後がない、まさに背水の陣(笑)社長(株式会社きのこ屋 三留弘法さん)は「雇うしかないじゃん」と私のお願いを受けてくださり、半年間ほどお世話になりました。
 きくらげ農家の仕事を学ばせてもらう中で、三留さんにはよく「できることは自分でやれ」と言われました。コスト的な意味合いもあったと思いますけど、まずは自分で考え抜いて、やってみる事が重要だと教えてくれたのだと思います。ちなみに複数ある栽培ビニールハウスのうち1棟は、試行錯誤しながら自分で建てたんですよ。
 あとは「話しかけやすい人でいろ」と教えられましたね。師匠と弟子の関係ですが、気軽に話し合える環境は有難かったです。自分は元々引っ込み思案な性格で、取材のカメラも本当は苦手なんです。会社員時代は職場で、全く笑わない人だったんですよ(笑)ひとりで栽培の管理していると、やっぱり不安になる時があるんです。そんな時の相談相手の存在は本当の心強いものです。今も事あるごとに西会津に通って三留さんと話をしていると、人との繋がりが大切だと改めて感じますし、栽培技術と同様に大きな財産ですね。
 私と同じように三留さんに研修を受けた鏡石の生産者(佐久間産業株式会社 佐久間一男さん)と一緒に「きくらげ三銃士」なるユニットを作り、福島産きくらげをアピールする活動をしています。生産者としてはライバルかもしれませんが、その前に消費の裾野を広める仲間として協力していきたいと思っています。おしゃべり好きな3人で、ワイワイやっていますよ(笑)

「栽培も経営も、まだまだこれから。仕事を楽しむ気持は忘れずに、成長していきたいと思っています。」
 

―なるほど。その安田さんの明るさは、栽培技術と伴に体得したものなんですね(笑)今の時期(取材時は2月上旬)は、しいたけを栽培されているようですが、きくらげを出発点として、今後はどのような展望をお持ちでしょうか?

安田さん:通年で農産品を出荷できる体制を整えたいと思っています。6~10月はきくらげ、9月~2月はしいたけ、春先からは、夏まで収穫できるハウスを利用したアスパラの促成栽培を準備しています。これからの夢でもある法人化、その時の従業員の雇用も見越したステップです。年間を通して業務がなければ、常勤の雇用は難しいですからね。
 あとはマッシュルームの栽培をしたいと思っています。旨味はキノコ類の中でもダントツなんです。松茸のように珍重される「ツチグリ(まめだんご)」というトリフの仲間のキノコが阿武隈山地のみで採れるんですが、その炊き込みご飯は知る人ぞ知る季節の風物詩で、味はマッシュルームに似ているんです。生産したマッシュルールの炊き込みご飯を、田村特産のレシピとして打ち出せれば面白いかなと思いますね。ツチグリは人工栽培が難しいにしても、珍しいきのこを色々と生産できれば、他にはない生産者の特色になりますよね。私のような小規模生産者としては、そこにビジネスチャンスがあると思っています。

-例えば安田さんのように農業未経験で異業種から、もっと広く他地域からの移住者などきくらげ栽培を志望する人が来たら、研修させてくれますか?

安田さん:うーん見学はOKですけど、自分もまだ始めて間もない身ですからね(笑)もし志望する人がいたら、師匠の所に送り込みますよ。もう田村ではやりたくないと言うほど、厳しく指導してもらいます(笑)それは冗談ですが、真剣にきくらげに向き合う生産者が増えてくれればと思っていますし、そういう人に技術が継承していけばいいなと思っています。
 農業と同様に地域に対しても考え方は一緒です。田村で暮らしたい、農業をしたいと思う人には手厚いサポートを受けて欲しいし、自分も協力していきたいと思っています。自分が受け取った物を、地域に還元していきたいなという気持ちが強いんです。
 例えば農業だったら、直売所に新規就農者のコーナーを作ったらいいと思っています。ベテラン農家ほどの品質が良くなくても、買って食べて新人を応援する、新人を育てる猶予と場所があってもいい。農業のライバルであり仲間が増えれば、自分も頑張ろうと思えますしね。うちのきくらげを使ってもらっている飲食店で、考案してもらったレシピを動画付きで公開したり、直売所にきくらげ料理の食品サンプルを置くとか、知恵を絞って色々試しています。
 またこれからの生産者を育てていくのと同時に、新しい飲食店を育てることも地域には大切だと思っています。そこでしか食べれない物があれば、遠くからでも足を運んでくれるし、自分の農産品を使ってもらうのは、最上のモチベーションなんです。 
 その一環として、飲食を志す若者に実践の場を設けてあげればいいと思うんです。例えば駅前の空きテナント利用して、市内産品を使った期間限定の飲食店を、調理関係の学校ごとに出店してもらうとかね。お店同士が切磋琢磨し、率直なお客様の感想を得られる事は、代えがたい経験になると思います。その延長上で将来田村で出店してくれれば、地域活性の一助にもなるはずです。
 私はこれからも、田村で頑張る人を応援し続けたいと思っています。別に見返りを求めている訳じゃないんです。頑張っている人を応援する事が私の活力なんです。


「うちの娘が将来何になりたいか学校で発表する時に、きくらげ農家になると答えたんです。作業は特に手伝ってくれませんけどね(笑)」と安田さん。将来的には利益が出る農業に成長させ、子どもに残せる資産として継いでもらえる形にしたいと言います。これからの農業、そして地域担う若者を惜しみなく応援し続けていきたいと語る表情は、相手を虜にする人懐こさと、自分の考えを実行に移す力強さが兼ね備えた「かっこいい大人」の笑顔でした。

移ヶ茸
住所:福島県田村市船引町北移字畦石475

移ヶ茸きくらげ販売店舗

ふぁせるたむら(田村)
ベレッシュ農産物直売所(郡山)
道の駅 さくらの郷(二本松)
あだたらの里直売所(大玉)
三春の里 かご市(三春)
新鮮野菜館 谷川瀬店(いわき)
道の駅 いいたて村の道の駅までい館(飯館)など


ライター:江藤 純