MENU

使い方

お問い合わせ

「たむらしごと。」の使い方

サイトのご利用方法をご覧いただけます。

検索する

気になる仕事や働き方、イベント等を見つけます。

問い合わせる

本サイト内の「お問い合わせ」よりご連絡ください。後ほどワンストップセンターよりご連絡いたします。

マッチング

お問い合わせ内容に応じてマッチングのお手伝いをいたします。

「母娘」で今まで頑張った年月。これからも「ふたり」で。  ママリン食彩工房 渡邉朱美さん ヒロ子さん

コラム

2021.02.10


母は家庭の味のお惣菜、娘はパンとスイーツを製造。
原点は「自分達が食べたい物」を作ること。

母と娘で自宅敷地内にある加工所に立つこと15年あまり。その味はすっかり地域の味として親しまれているママリン食彩工房さん。工房を切り盛りするおふたりに現在までの工房の軌跡と、飲食スペースもある店舗出店など、これからの話をお伺いしてきました。


-調理以外の仕事も、ヒロ子さんと朱美さんの母娘のふたりで切り盛りされているんですね。早朝から夕方まで働き者ですね(笑)そんなおふたりが、工房を始められたきっかけを教えてください。

ヒロ子さん:平成18年にこの工房を立ち上げる前、私は大手スーパーの精肉部で15年以上働いていました。当時は男性ばかりの現場で、女性の管理職は私を含めて2名だけしかいない状況。管理職になるまで頑張った職場には愛着がありましたので、定年まで勤め上げようと考えていましたが、気の張る環境で重い肉塊を取り扱う仕事で、心身共に体調を崩してしまって続けられなくなってしまったんです。
 思い切って退職することにし、療養しながら美味しい物を食べ歩いたり、食品関係の勉強をしていました。元々働くのは好きな性分なので、ずっと頭の片隅にあった自分で食べ物を提供する商売への夢が、体調が戻るにつれて湧いてきました。思えばスーパーへの就職の動機も、食品の勉強をしなががらお金がもらえると思って始めたんです。

「朱美さんが苦心して作り上げた「まんま食パン」は炊いたご飯も相まって、もっちり甘味のあるそのままでもいけちゃう人気商品。」

-家では当然のように家事をこなし、仕事場では人一倍頑張って仕事に打ち込む日々。今よりも女性が管理職で働く事は、大変な時代だったと思います。ご苦労されてきたのですね。一方で娘の朱美さんは、ヒロ子さんの夢である工房の立ち上げに、どのようなきっかけで関わることになるのでしょうか?

朱美さん:私は大学進学の時に実家を離れて、東京で働いていました。直売所(ふぁせるたむら)が船引にできるということで、まだ自前の加工所はありませんでしたが、母がお餅とか漬物を出荷していて、帰省した時は袋詰めなど手伝っていたんです。その時に母からこっち(田村)に戻って、一緒にやってみないかと声を掛けられたんです。
 私がまだ東京にいた時に、母がお米などと一緒にアンパンを送ってくれて、衝撃的な美味しさだったんです。何か特別な原料や製法を使ってないと母は言うんですが、手作りでこんなに美味しい物ができるんだっていう事を覚えていて、その時からいつかは母を手伝いたいなと思っていました。
ヒロ子さん:若い頃からパンを作ったりしていましたが、療養中の時でパン教室で習っていたんです。娘も転職を考えていたようで声を掛けてみたんです。
 本当に何でもふたりで、今まで全て立ち上げたんですよ。最初に保健所に行くのもふたりでね。オーブンなど機材選びもふたりで相談して徐々に、10年くらいかけて買い揃えていったんです。だからこそ、今まで工房を大事に育ててきたんでしょうけどね。老後にとっておいた蓄えを使ってしまいました(笑)
 
-お話を伺っていると、今までコツコツと貯めていた経験が結実してママリン食彩工房という形にになっていくのが分かります。ところで、ヒロ子さんがご飯やお餅、お惣菜。朱美さんがパン担当の区分は、自然とそうなったのですか?

朱美さん:東京では全く異分野の仕事をしていて漠然と戻って来たんで、ただ手伝うだけじゃなくて何か責任を持って任せた方がいいと、母が思ったんでしょうね。まだ20代だったので、飽きちゃって東京に逃げ出しかねないと(笑)パン作りの最初の師匠は母で、後は自分で情報や技術を見聞きしながら、のびのびと自由にやらせてもらっていました。
 最初の頃は機材もないから、家庭の作り方。生地を手ごねして、お湯を張った発泡スチロールの中で発酵させて、小さなオーブンで焼いていたよね(笑)食パンが美味しいパン屋さんは信頼できると思ったんで、そのまま食べても美味しい食パンを目指して、いろいろ条件を変えながら試行錯誤していました。ふたりで試食してね。
ヒロ子さん:そうね。お互い納得しなければ、商品化しない暗黙の決まりなんです。

「ヒロ子さんが作る山菜や鶏肉など具沢山のおこわは、昔も今も変わらず心落ち着く味。
ふぁせるたむらで購入できます。」

 

―おふたり本当に仲がいいんですね。母と娘だと衝突するケースも多いと思うんですが、仲良く続けられている秘訣みたいなものは、あるのですか?

朱美さん:遠慮なく言えるのが、いいのかもしれませんね。
ヒロ子さん:最近は朱美に一方的に、言われちゃってるね(笑)
朱美さん:そんなことないよ(笑)お互い激しく衝突することはないですね。言われている事はそれなりに納得できる事で、一番近い人に言われているから素直に聞けるんですよ。以前、小さなお店を出していた時は1~2年人を雇っていた時期はありましたが、それ以外は、ふたり。それが今まで続いているという感じです。今まであっという間でした。
 昨年から事業承継という形で母から私に代表が移ったので、安心安全な食べ物を14年間責任を持って提供し続けていた母の凄さと、これからの責任感を感じています。
ヒロ子さん:特に体調が悪く代表を譲った訳じゃなく、借金もないし機械も一通り揃ったのでもう大丈夫かなと思って。70歳になったのを区切りにね。
 けど仕事自体は、体がもつまで続けます。やりたい事が、まだまだたくさんあって120歳まで生きても足りないくらい(笑)
朱美さん:高度成長期の日本で働いていた世代は、元気ですよね(笑)歳を重ねても気力が落ちないですね。
 

-そのたくさんある夢のひとつとして、準備中の店舗「ぷくぷく茶屋。」出店があると思います。今後の展開を教えてください。

朱美さん:25年前まで住んでいた古民家をどうにか活用できないかと思って、工房を始めて10年くらいから考えていたんです。自分達の拠り所になる城を持つのは自営業の夢ですからね。
 以前に少しやっていたお店では物販だけだったので、今回は飲食スペースも設ける予定です。本当は母屋を使いたかったのですが修繕費が予想以上にかかるとわかり断念し、隣りにあった納屋をリノベーションして使うことにしました。
 また田村ならではの商品も出したいなと思っていて、昨年初めて製作したタテガミは抹茶の緑色、赤い顔はビーツの色を使い、優しい甘さの白あんが入った「お人形様パン」もご当地パンとして提供できればいいですね。
ヒロ子さん:なるべく地域の物で作りたいので、田村や県産の野菜や米を使うようにしています。最近は生産者さんも高齢になって、なかなか地元の物を通年で揃えるのが難しくなってきましたね。
朱美さん:事業計画については商工会の担当の方がいろいろと親身になって相談に乗ってくださり、コンサルタントの先生のご指導のもとで、新商品の開発や販路開拓などのビジネスプランを立てる講習(経営革新計画)を、店舗作りの一助になるかと思って昨年第一期生として受講しました。今も引き続き、相談に乗ってもらっています。やっぱり私達だけだと事業計画の立案が難しく、資金調達の障害になっていたので本当に助かっています。
 先々の夢としては、物販と飲食の他に「学びの場」ができればと考えています。パンや味噌づくりなど食の関わるワークショップはもちろん、生活に潤いや豊かさをもたらすような事が学べる場を、小さくても作れたらいいですね。
 

‐コロナの影響で飲食店がとても厳しい状況の中でも、未来へ実際に動き出しているのはどうしてでしょうか?

朱美さん:本当に大変なんですけどね(笑)私達もこの状況前はやる気満々でしたが、今は大丈夫なのかと思っています。先生にも守りの時期と助言されたのですが、走り出してしまったものはね。母も70歳ですし。まあ…ふたりでお店をやりたいんです(笑)
 私だけでやるというのは想像できないし、ふたりでお店をやるタイミングは、今が最後と思っているんです。
ヒロ子さん:イベントなどのお弁当の注文は、ほとんど無くなってしまいましたが、その他の売上はそんなに落ちていないんです。皆さんこのご時世で外食ができない分、私達のお惣菜を買っていただいてご家庭で楽しんで頂いているのだと思います。家庭的な味は、飽きも来ませんしね。この状況だからこそ、うちの味が求められている部分もあるんじゃないかと思います。
朱美さん:工房の原点はシンプルに言ってしまえば、ふたりが食べたい物を作っているだけなんです(笑)新しいお店に関しても同じで、私達が興味がある事、素直に見たい、聞きたい、触れたいと思える物に出会える場にしていこうと思っています。


朱美さん曰く、ヒロ子さんは人の営みの原点である「食から離れるな」と常々口にしているそうです。料理上手の祖母の影響で、小さな頃から料理で家族を支えていたというヒロ子さん。その味で育ち、大切な工房のパートナーとなった朱美さん。生活様式を見直すことを余儀なくされた今だからこそ、お話頂いた豊かな食の記憶、そこから導き出された言葉は、大きな価値を持っていると感じました。今日もおふたりは、朝の3時から加工所に立って「自分が食べたい物」を、心を込めてこしらえています。

<ママリン食彩工房>
住所:〒963-4316 福島県田村市船引町芦沢字明城180-1
取り扱い店:愛情館(郡山)
ふぁせるたむら(田村)
※事前予約にて工場でのお引き渡しも可

ライター:江藤 純