「副業解禁」。企業のメリットとデメリット対策について
コラム
2020.01.29


注目を集める「副業」。企業側のメリットは?
就業規則の観点から「副業禁止」の企業がまだまだ多いのが実情ですが、働き方改革の一環で「副業解禁」への注目度も確実に高まっています。
社員にとっては本業以外の収入を確保できたり、新しいスキルを取得したりと、実践することでさまざまなメリットがある「副業」。では、その一方で副業を受け入れる企業にとっては、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
企業の「副業解禁」が加速する背景
なぜ今「副業解禁」の動きが起こっているのでしょうか。
厚生労働省では、平成30年1月に「モデル就業規則」を改定し、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、副業・兼業についての規定を新設しています。
また、いち早く副業を解禁したロート製薬やヤフー、サイボウズの取り組みに注目が集まり、ここ数年で一気に「副業」への関心が高まっています。
労働人口減少や働き方改革の文脈で、こうした自由な働き方を促進するような動きが加速するにつれ、副業解禁したほうが「社員の働き方に寛容な企業だ」と、採用においても優位に見られるようになっているのです。
【メリット】副業解禁で、社員の定着率や質が高まる
社員への副業解禁は、企業にとってもメリットがあります。
・本業では得られない知識やスキルを身に着け、人材の質が高まる
・副業解禁により、優秀な人材の流出防止につながる(定着率が向上する)
・副業経由で得た情報や人脈を、本業の事業拡大に活用できる
・社員の仕事へのやりがいが高まる
・採用において優秀な人材の確保につながる
また、パーソル総合研究所の調査によると、副業を経験した社員が「既存のやり方にこだわらず、より良い方法や改善点を模索するようになった」「自分の仕事のやり方を定期的に振り返るようになった」などと回答しています。
参照)副業・兼業を企業は容認すべきなのか?~副業・兼業のメリット・デメリットを徹底調査~
こうしたアンケートからも、副業をすることで本業へのポジティブな効果が現れていることが分かりますね。
【デメリット】労働時間や健康管理ができないと難しい
一方で、企業が副業を受け入れることによるデメリットもあります。
・本業の機密情報が漏洩する危険性が高まる
・社員の労働時間管理・健康管理が難しくなり、本業に支障が出る
・離職を促してしまう
副業のスケジュール管理を社員本人に任せすぎると、本業と副業のバランスをうまく取れず、過重労働になったり疲労が溜まったりして、本業に悪影響を及ぼす可能性もあります。
こうした懸念から副業解禁をためらう企業があることも確かです。
企業ができるサポートで副業のデメリットをカバー
デメリットもある副業ですが、副業を実践する社員に対して企業ができるサポートはあります。
例えば、副業の労働時間の管理を会社でも行ったり、副業のやり方や悩み事の相談に乗ったりすることで、社員はより安心して働くことができます。
パーソル総合研究所での調査によると、こうしたサポートのおかげで、副業社員の本業へのロイヤリティが向上したり、仕事へのモチベーションがアップしたというデータもあるようです。
検討の上、副業解禁へのステップを着実に
まずは副業のメリット・デメリットを比較し、自社の環境に合うのかを検討してみてください。実際に社員に「副業解禁したらどう感じますか?」と問いかけてみるのもよいかもしれません。
まだまだ副業黎明期と言える現在、これまでの実践例や申請ルールを参考にしながらも、社員や自社にとってWin-Winの環境を慎重に検討することが、新しい時代の働き方を推進する企業に不可欠な姿勢と言えます。
ライター:榎本彩花